一年目エンジニア

n年目です。

オームの法則で理解する歪みエフェクター(電気回路の基本1)

まえがき

オームの法則は、電圧・電流・抵抗それぞれの関係を示す電気の最も基本となる法則です。
このテキストの目標は,オームの法則を使って歪みエフェクター「オーバードライブ」の基本的な回路の解析や設計ができるよう、学習の補助を行うことです。

文章の構成

  1. 電気回路の基本 (本テキスト)
  2. オームの法則 (今後予定)
  3. 電気信号と音の関係 (今後予定)
  4. 歪みを作るための電気回路 (今後予定)

「電気回路の基本」では、回路図の読み方や電気部品の特性について学習します。オームの法則を理解するための学習を行います。

オームの法則」では,例題を用いて回路内の電圧や電流を求める方法を学習します。

「電気信号と音の関係」では、電気が音に変わる仕組みと、信号の形によって聞こえる音の違いを学習します。

「歪みを作るための電気回路」では、電気回路で歪んだ信号波形を作る方法を学習します。

電気回路の基本

オームの法則を理解する前に,電気回路を読めるようになることを目標に学習を進めます。

電気部品と回路記号

電気回路を読むためには、部品の種類や記号、特性を理解する必要があります。ここでは頻繁に使用される部品について述べます。

電源

回路を動かす源です。ACアダプタやバッテリーのことです。
この記号の両端が電源電圧になります。
例えば、記号の横に「+9V」と書いてあれば、その電源には9Vのバッテリーなどを接続します。

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GND

回路上で0Vを示す場所です。

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抵抗

電流を流しにくくする部品です。抵抗値が大きいほど電流は流れにくくなります。
回路図によってはギザギザの記号を使用している場合が有ります。

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ボリューム(可変抵抗)

操作することで抵抗値を変えられる部品です。
エフェクターでは、音量調整やひずみ調整用にツマミのついたボリュームが使われています。

端子は3つあり、1と3の間の抵抗値は一定です。ツマミやバーを操作すると1と2(2と3)の間の抵抗値が変わります。
回路図によってはギザギザの記号を使用している場合が有ります。

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コンデンサ

主に以下の役割があります。

  1. 電気をためる。
  2. 交流の信号だけを通す。

「電気をためる」役割は部品を動かすための超簡易バッテリのようにして使われます。IC等が動作する時に電源電圧が変動した場合の対処として使います。

「交流の信号だけを通す」役割は、ノイズを除去したり、ギターの交流信号だけを回路に通したいときに使われます。

コンデンサにも種類があり,よく使われるのは次の2種類です。回路に通す信号の周波数などにより使い分けます。

セラミックコンデンサ小型で無極性のコンデンサです。
無極性のため回路内の電圧の高低差を気にせずに使用できます。
良く使用されるのは,数10pF~.01uFまでの容量で,高い周波数の信号を通すために使用します。

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電解コンデンサ
セラミックコンデンサより大容量です。
極性があり記号にも記載されています。
電圧が高いほうに「+」側を接続します。
1uF以上のものが多くあり,電源安定用に電気をためたり,低周波用のフィルタ回路に使用します。

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その他にも,フィルムコンデンサタンタルコンデンサなどがあります。

ダイオード

電流を片方向にだけ流します。
端子が2つあり、一方を「アノード」もう一方を「カソード」と呼びます。
アノードからカソードの方向に電圧をかけても、約0.6V以上の電圧になりません。

電源の逆接続保護や、信号波形のクリップ(波形を切ること)に使います。

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スイッチ

回路の接続先を変更する時に使用します。エフェクターでは主に以下の用途で使われます。

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  • 信号をそのまま通す(バイパス)有無の切り換え
  • LED ON / OFF の切り換え

スイッチを押す度に回路が切り換わります。

エフェクターのフットスイッチに良く使用されるスイッチは3PDTスイッチと言います。
記号は下図のようなもので,先ほどの1回路分のスイッチを3つ並べた記号になっています。
スイッチを切り換えるたびに全ての回路が切り換わります。

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回路図によっては,3つの回路をそれぞれ近くに書かず、1つずつバラバラに記載している場合があります。




他にオペアンプなどの記号がありますが、それは別のテキストで。