一年目エンジニア

n年目です。

オームの法則で理解する歪みエフェクター(電気信号と音の関係1)

ijimenaide.hatenablog.com

上記記事の続きです。
今回は波形と実際に聞こえる音の違いについてです。

電気信号と音の関係

音色と波形

ギターアンプに繋ぐギターを変えると、鳴る音が変わります。
エフェクターを変えても同じことです。

この違いはギターアンプに入力する電気信号の形が異なることが原因です。

YouTubeなどで電気波形によって音が変わることを確認できます。
正弦波、方形波、三角波など…
それぞれの波形に対する音は次のリンクから確かめられます。
youtu.be

とても大雑把にいうと,ギターのクリーントーンは正弦波に近く、歪んだ音は方形波に近い信号の形をしています。

同じ440HzのA(ラ)の音でも,クリーントーンディストーションでは違う音が聞こえます。それは信号波形が違うためです。
歪み系エフェクターでは、ギターの電気信号を方形波に近づけることであの音を出しています。(とても大雑把な説明です。)

波形が違うと,波形に含まれる色々な音の成分量が変わってきます。
その成分量が音色を変えています。

では、「綺麗な正弦波」と「歪ませた方形波」の波形は成分にどのような違いがあるのでしょうか?

波形解析 歪ませると倍音が増える

波形の成分量を解析する方法に,「スペクトル解析」の説明をします。
スペクトル解析では、波形を解析することができます。
解析を行う波形で、周波数の正弦波がどれくらいの強さで入っているか,それぞれ周波数について解析できます。

1Hzの正弦波について解析

1Hzの正弦波はグラフで表すと図のようになります。
縦軸が電気信号の強さ、横軸が時間です。1秒ごとに波が1回出てきます。
f:id:daigakuinnsei:20200427142140p:plain:w250
スペクトル解析を行うと次のようにグラフが変わります。
縦軸が信号の強さ、横軸が周波数です。
1Hzの所に強さ1の線が立ちます。これは「解析した波形には強さ1の1Hzの周波数が入っている」という意味を表しています。
f:id:daigakuinnsei:20200427142204p:plain:w250
歪んだ音の波形に似ている方形波の波形とスペクトルは次のようなグラフになります。
f:id:daigakuinnsei:20200427142448p:plain:w250
f:id:daigakuinnsei:20200427142505p:plain:w250

1Hzのほかに3Hz、5Hz、7Hz…と、1Hzの奇数倍の周波数に線が立ちます。
そして線の高さは徐々に小さくなっています。
これは「1Hzの正弦波のほかに、1Hzを奇数倍した周波数の正弦波を足し合わせた波形です。」ということを表しています。

同じ1Hzの波形でも正弦波の方がたくさんの周波数を含んで着ることが分かります。

スペクトルから波形を作って確認してみる

今度は逆に,先ほど得られた方形波のスペクトル解析から波形を作っていき,本当に方形波になるのかを確認してみます。

1Hzの正弦波の最大値を1として、グラフを描きます。

f:id:daigakuinnsei:20200427142650p:plain:w250

3Hzの正弦波は、グラフを見ると1Hzの正弦波の1/3の強さなので、その波形を先ほどのものに足します。

3Hzの正弦波を…
f:id:daigakuinnsei:20200427142718p:plain:w250
1Hzの正弦波に足すと…
f:id:daigakuinnsei:20200427142801p:plain:w250

5Hzの正弦波は、グラフを見ると1Hzの正弦波の1/5の強さなので、その波形を先ほどのものに足します。

5Hzの正弦波を…
f:id:daigakuinnsei:20200427142833p:plain:w250
1Hzと3Hzを足したものに、さらに足すと…
f:id:daigakuinnsei:20200427142902p:plain:w250

方形波に近づいてきました。

この調子で7Hzまで足し合わせたものが下の図になります。
どんどん方形波に近づいていきます。
f:id:daigakuinnsei:20200427142937p:plain:w250

このように,聞こえる音程の奇数倍の波形をどんどん足していくと、方形波に近づいていきます。

歪み系エフェクターでは、正弦波に近いギターの音を方形波に近づけます。
そのため、奇数の倍音エフェクターによって作られることになります。