一年目エンジニア

n年目です。

オームの法則で理解する歪みエフェクター(オームの法則2)

ijimenaide.hatenablog.com
続きです。
ここではコンデンサが交流信号に対してどう回路に影響するのかを書きます。

コンデンサに流れる電流や、かかる電圧も、抵抗のときと同様にオームの法則を使って求めることができます。

コンデンサは交流を通しますが、「交流信号の周波数」によって、電圧や電流が変わります。
つまりコンデンサは信号周波数によって変化する抵抗と置き換えて考えられます。

このコンデンサの抵抗をRcとして、式で表すと次のようになります。

  • Rc = 1 / (2π × f × C)

πは円周率です。精度が必要ない計算では3を使えば十分でしょう。

fは信号周波数です。
Cはコンデンサの容量です。

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容量が一定の場合,周波数が高いほどコンデンサの抵抗は低くなります。
周波数が一定の場合,コンデンサの容量が大きいほどコンデンサの抵抗は小さくなります。

例題1

次の回路でコンデンサに流れる電流を計算してみましょう。

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電源の信号周波数が1kHzなので、f = 1000 です。
コンデンサの容量が0.1μFなのでC = 0.1 × 10-6 です。

先程の式に代入し、Rcを求めます。

  • Rc = 1 / (2π × f × C) = 1 / ( 2 × 3 × 1000 × 0.1 × 10-6 ) ≒ 16.7

Rcが約16.7Ωと求まりました。
このコンデンサに流れる電流は、次で求めることができます。

  • I = V / Rc = V / 16.7

コンデンサに通る信号の電圧の振幅が1Vだった場合、コンデンサに流れる電流は次の通りです。コンデンサに流れる電流は振幅0.06Aとなります。

  • I = V / 16.7 = 1 / 16.7 ≒ 0.06

例題2(ハイパスフィルタ)

コンデンサの下側に抵抗を入れた回路の,コンデンサと抵抗の間の電圧Vcrを求めます。

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これは抵抗を使用した以前の例題の応用です。
コンデンサは、交流だけを通す抵抗とみなせるので、次のように置き換えられます。

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以前の例題で,R1とR2の間の電圧VrVr = V × R2 / (R1 + R2) で表せることがわかりました。
今回、コンデンサはその例題のR1と同じ位置にあるので、R1 = Rc1 と置きかえ,Vcrを求めることができます。

  • Vcr = V × R2 / (R1 + R2) = V × R2 / (Rc1 + R2)

Rc1 = 1 / (2π × f × C1) なので、信号周波数fが大きいほどRc1は小さくなります。
つまりVcrは信号 周波数が高いほど大きく,Vに近づきます。

周波数が高い信号はそのままほかの回路に伝えることが出来るため,このCとRが繋がった回路を「HPF(ハイパスフィルタ)」と言います。

回路内では,コンデンサを横向きにした形でかかれることが多いです。

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例題3(ローパスフィルタ)

例題2の回路から、コンデンサと抵抗の位置を逆にした回路があります。
この回路の抵抗とコンデンサ間の電圧Vrcを求めます。

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やることは先ほどと同じです。

2つの抵抗間の電圧は V = V × R2 / (R1 + R2) でした。
このR2がRcに置き換わるので、電圧Vrcは次のようになります。

  • Vrc = V × R2 / (R1 + R2) = V × Rc / (R1 + Rc)

繰り返しますが Rc = 1 / (2π × f × C) なので、信号周波数fが高いほどRcは小さくなります。
また、容量Cが大きいほどRcは小さくなります。

Rcの値がR1と比べて「とても大きい場合」、Vrcは次のようになります。

  • Vrc = V × Rc / (R1 + Rc) ≒ V × Rc / Rc = V

Vrcは電源の電圧と同じになりました。
Rcが「とても大きい場合」は、信号周波数fが低い場合や容量Cが小さい場合です。

逆にRcの値が「とても小さい場合」、Vrcは次のようにVrcは0Vになります。
Rcが小さくなる時は,周波数fが高い時です。つまり信号周波数が高いと,コンデンサに電圧がかからないことを示しています。

  • Vrc = V × Rc / (R1 + Rc) ≒ V × 0 / (R1 + 0) = 0

逆にRcが「とても大きい場合」は、信号周波数fが低い場合や容量Cが小さい場合です。

つまりこの回路は先ほどの例とは逆に,周波数が低い信号を取り出してほかの回路に伝えることが出来ます。
この回路を「LPF(ローパスフィルタ)」と言います。

こちらも横向きで書かれることが多いです。
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