一年目エンジニア

n年目です。

オペアンプの内部回路をシミュレーションで解析してみる

オペアンプの内部回路

本記事では以下の書籍を参考にしたオペアンプをltsipceで部分的に解析してみます。
また、自分の中での不明点も記録していきます。

なお、参考にした回路は書籍内「第12章 図9」の回路です。

定本 トランジスタ回路の設計?増幅回路技術を実験を通してやさしく解析

オペアンプ回路の構成

オペアンプは主に次の構成でできているようです。*1

  1. 差動増幅部
  2. エミッタ接地増幅部
  3. 出力部(エミッタフォロワ)

差動増幅部では、2つの入力端子に入力された信号の差を増幅します。
エミッタ接地増幅部では、差動増幅部からの出力信号をするようです。
出力部は、電圧電流を取り出します。当然ながらバッファも込みのようです。



順にLTSPICEで回路をくみ上げていき、解析していきます。

差動増幅部

まずは差動増幅部を解析してみます。
作製した回路は次のようになります。

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参考図書と異なる個所は以下です。

  • 定電圧を作るのにダイオード2個使っています。
  • トランジスタはマッチングが取れていればいいので、適当に選択しました。
  • 回路内の定電流回路の電流値は同じになるように適宜抵抗値を変更しました。


R7,D1,D2,Q3,R4で定電流回路を作っています。

+15VからR7を介してダイオードに電圧をかけます。
Q3-Bの電圧は、D1,D2の順方向電圧約0.7Vが加わって、約-13.64Vになりました(-15V+0.7V+0.7V)。
Q3-Eの電圧は、Q3-BよりもB-E間順方向電圧約0.7Vが加わって、約-14.30Vでした。

この-14.3Vと負電源-15Vの間に抵抗を入れて定電流を作ります。
参考図書では2mA流しているので、同様に流すとして350Ω入れました。
流れる電流は約2mAとなりました。

Q1-EおよびQ2-Eはそれぞれのベースから約0.7V低い電圧になります。
IN+,IN-の信号が0Vであれば、それぞれのトランジスタのエミッタ電圧は0Vよりも約0.7V低くなります。
シミュレーションでは約-0.65Vでした。

Q1,Q2のhfeは等しいので、それぞれに流れる電流は定電流回路の2mAを半分にした値になります。
入力が無信号であればQ1-CとQ2-Cには1mAずつ流れます。



では、入力が変化したらどうなるでしょうか。



Q2に0.01Vppの正弦波を入れて、R3から出力を見てみます。
次のことが起きています。

  1. Q2-B~Q2-E間の電圧が変化した。
  2. Q2のB-E間電圧が変化したので、Q2-Cに流れる電流の量が1mAから変わった。
  3. Q1とQ2は定電流回路により、合計2mA流れようとする。
  4. 定電流回路の出力に合わせるようにQ1-Cの電流が変化した。
  5. Q1-Cの電流が変化したので、R3で変わった分の電流が電圧で現れた。

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一方のトランジスタでコレクタ電流が変化すると、帳尻を合わせようとしてもう一方のトランジスタのコレクタ電流も変化します。
これが差動増幅回路の動作です。


ちなみに、Q1とQ2の両方に同じ波形を入れると出力は"さほど"変化しません。
微妙に出力が出ます。

シミュレーションした結果が以下です。
同様の波形を入れ、R3下部の電圧を見てみます。
結果微妙に、出力が出ていることが分かります。*2

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エミッタ接地増幅部

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エミッタ接地をしてあるQ4-Bに差動増幅の出力を入れて、Q4-Cから信号を取り出します。*3
後の出力部エミッタフォロワ(プッシュプル)に接続するため、さらにダイオードで電位をずらして、そこからも信号を取り出します。
波形を確認するため、仮の負荷抵抗をつけておきます。

ダイオードの更にその先には定電流回路があります。
これが実質的(?)なQ4-Eの負荷になります。
この定電流回路の動作は、参考図書のp83、エミッタフォロワの応用回路の記載のものと同様で、出力のクリップを抑えていると推測します。
「定電流回路の電流値 = Q4に流れる電流 + 2つの負荷の電流」となるように、余剰な負荷に電流を流し込んだり、足りない電流を吸い込んだりしていると思います。

R5、R1、R2、R6の電流を見てみます。
なお、入力は先程と同じようにIN-に0.01Vを入力しています。

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R6は、Q5と定電流回路を形成しているので、約2mA流れています。
R5は、「(差動信号から出た出力電圧-0.7V) / R5」だけの電流が流れて、約2.5mAを中心に電流が変化しています。
そのまま電流が定電流回路に流れると、定電流回路の電流約2mAとつじつまが合わなくなるので、仮に付けた負荷に流れし(または吸い込んで)調整されます。*4

出力部

出力部はエミッタフォロワ、PNP/NPNのトランジスタが付いているのでプッシュプルです。
出力電流をパワーアップし、より多くの電流を扱えるようにします。

回路図内右のQ6,R2,R1,Q7がそうです。

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---ミスがありました----
シミュレーションしてようやく気が付いたのですが、Q6,Q7のバイアスがうまくありませんでした。
ふたつのダイオードを入れていますが、ダイオードによるバイアスが2つのトランジスタのB-E間電圧以下だったので、バイアスされていませんでした。
ということで以降は、エミッタ増幅のところにもう一つダイオードを追加して、さらにわかりやすいようにQ6-Q7間の抵抗をとって解析をしました。

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増幅率

-INに1mVの正弦波を入力して出力を見てみます。
約2Vを中心に振幅3Vの波形が得られました。なので約3000倍の利得ということになります。

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オフセットなど

オフセットが悪い理由は内部回路のバイアスやトランジスタの選択かと推測します。
増幅率が一般的に売られているものより低い理由は、内部回路にカレントミラー回路やダーリントン回路で電流の変化率を上げていないためと推測します。


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*1:「~ようです」と記載しているのは、執筆時点で確信が持てない箇所です。この記事を書きながら勉強してます。

*2:実際のオペアンプでも、同じ信号を入れたときにどれだけ出力が変わらないかを表す指標があり、その指標を同相信号除去比と言います。

*3:エミッタ接地といいつつ抵抗を介するので毎回どの接地回路か迷います

*4:定電流回路が基準となって動くので、エミッタ接地増幅回路というよりも電圧電流変換とみたほうがすっきりしました。